RPAの普及とリストラ旋風の関係について気になっているサラリーマンの方。

大企業を中心にリストラのニュースが世間を騒がせていますが、その原因の一部がRPAによる業務自動化にあるのではないか、と言われているようだ、それなら、RPAを導入する自分達もリストラされるのではないか、と危機感を覚えているのではないでしょうか?

この記事では私の見解を解説したいと思いますが、結論を先に言うと、RPAの普及によりリストラは起きていませんし、起きるはずがありません。その理由を解説していきます。

この記事で解説すること
  1. RPAによりリストラが起きているのかについて実例を挙げて考察します
  2. 私の見解をまとめます
私の信頼性
  1. IT歴20年。システム開発から企業内の業務改善まで幅広く経験してきました。
  2. 顧客企業において2016年からRPA内製化をサポートし実績を積み上げています。
  3. RPAシステム構築の理論・構築・開発・運用を網羅した書籍『オープンソースで作る!RPAシステム開発入門』を出版しました。
  4. 2019年3月中小企業のための失敗しないRPA導入研修を行いました。
  5. 2019年5月リクルートスタッフィング登録者向けRPA超入門ハンズオンを行いました。

 

1.RPAとはリストラのための刺客なのか?【結論:違います】

1-1.銀行のリストラ

銀行では数年前からリストラ旋風が吹き荒れています。

みずほフィナンシャルグループ(8411)は1万9000人、三菱UFJ(8306)は9500人分、三井住友フィナンシャルグループ(8316)は4000人分──。3メガバンクは今年、相次ぎ人員や業務量の削減目標をまとめた。

参照≫メガ銀大リストラ 改革後の勝者は

単純な事務作業では「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる自動化システムの導入を進める。23年度までに約3000人分に相当する業務量を減らせる見込みだ。

参照≫三菱UFJ、本部人員を半減 営業などに異動

このような記事もあり、RPAが銀行のリストラに寄与していることは間違いないと思います。

しかし、銀行のリストラの要因は大まかに2つあるようです。

  1. 本業で儲からない(金融緩和されても借り手がいないし金利も少ない、国債を買っても儲からない)
  2. ブロックチェーン技術などのIT革新により決済業務が将来的にほとんど無くなる可能性がある

経済の専門家ではないので実際のところはわかりませんが、まず銀行を改革しないと立ち行かないのでリストラを決めて、人がいなくなると現在の業務も回らなくなるのでRPAで補完しているというストーリーだと思われます。

RPAのせいで銀行のリストラが起きているというのは、逆だということです。

1-2.大企業のリストラ

東芝、シャープ、富士通などの日本を代表する大企業が相次いでリストラを発表しました。これらの記事が出るたびにRPAの影響が取りざたされます。

しかし、これもRPAの影響は微々たるものでしょう。

例えば、損保ジャパン日本興亜の例ですが、「年間40万時間以上の時間創出を目指すと宣言した」とあります。

参照≫「RPAで40万時間削減」を掲げた損保ジャパン、導入後1年でどれだけ削減できたのか?

しかし、この記事によると損保ジャパン日本興亜の社員は約2万6000人。一人年間2000時間働くと仮定すると5200万時間となり、40万時間はわずか0.77%にすぎません。

他の似たような記事を参照しても、削減されたとされる工数はおおよそ1%前後です。大企業なので数十万時間という大きな数字になるだけです。

これくらいが妥当な数字なのではないかというのが私の実感でもあります。

また、前出した東芝、シャープ、富士通などの大企業のリストラの原因はRPAとは全く関係のない次元(世界的な景気情勢や経営層の失敗など)にありますので、ここでも、RPAとリストラの関係は薄いと言えるでしょう。

1-3.中小企業のRPA普及の実態

まだまだ普及が進んでいないのが実態です。理由は大きく2つ考えられます。

  1. 技術がわかる人が少ない
  2. 煩雑で細かい単位の業務が多いため、一つの改善効果が小さい。

1.IT技術がわかる人が少ない

IT技術に明るい人材は大企業に比べて圧倒的に少ないです。データは持っていませんが、IT部門が無い企業の方が多いのではないでしょうか。総務部門や経営企画部門がIT部門を兼任しているケースも多いです。

そのため、経営陣もITについて知識がとぼしく、まだPRAという言葉を知らない人も多いと想像されます。

2.煩雑で細かい単位の業務が多いため、一つの改善効果が小さい。

大企業に比べて中小企業は煩雑で細かい単位の業務が多いと言えます。

例えば、大手の取引先ごとに伝票や手順が違うので業務処理が変わるようなケースです。同じ業務であっても何パターンも存在するので、効率化が図れないわけです。

RPAで自動化したとしても、その自動化はその取引先との業務にしか使えず横展開できないため、全体としてRPAのライセンス費用の効果を出せない(つまり、人の作業の方が安い)、という結論になってしまいます。

このように、RPA自体が中小企業には浸透していない状態ですので、中小企業においてもRPAがリストラの原因になっている現実はあり得ないと考えられます。

 

まとめ

銀行、大企業、中小企業と分けて、リストラとRPAの関係について見てきましたが、どの層でも関連性は薄いと言えるでしょう。

私は3年間企業内でPRAを開発していますし、RPAが取りざたされる前から20年間ITで業務効率化してきましたが、それで人が減ったということはまったくありません(人が辞める時に、その人の業務の一部を自動化して補ったことはありますが)。

企業というのは常に新しい仕事が発生しており、むしろその仕事ができなくて困っているのです。現在の仕事をITで自動化できるなら、手の空いた人にやってもらいたい仕事を任せられるので大歓迎です。

 

おまけの証拠と結論

RPAはリストラの刺客となり得ない、という証拠はまだあります。「RPAを使ってリストラさせるくらいの技術力、実行力をもつ技術者は、そんなことに労力を使わない」という事実です。

RPAで複数人の全業務を自動化するには、技術力に加え、業務分析力と業務知識、政治力、現場との折衝力、その人達がいなくなっても日常業務に支障がない運用力などがすべて必要です。経営視点で改革を行わないと、会社が傾く事態に陥ってしまいますので、当然、経営についても能力が必要です。

そんなスーパーマンがわざわざリストラに加担するでしょうか?あり得ません。自分で会社を作って稼げる力が十二分にあります。

結論として、RPAによりリストラが発生することはありません。むしろ、積極的にRPA導入を進めて会社を発展させて、あなたも出世してください。