RPAは溶けてなくなるだろう

RPAの未来とはどんな形になのかを考えてみよう。結論から言うと、RPAは、OSの一部、もしくはクラウドサービスとしてプラットフォームに溶けてなくなっていくと考えられる。ITの世界には「本当に有用な機能であれば、いずれOSに組み込まれるか、クラウドサービスとして無償もしくは非常に低価格で提供されることになる」という流れがあるからだ。

事実、ファイル圧縮、メール、PDFファイル作成、セキュリティソフトなどは、かつては別途色々なベンダーから発売されたソフトウェア(もしくはフリーソフト)をインストールしていましたが、現在は最初からWindowsに搭載されている。ちなみにそれらの会社は買収されたか倒産したのだと思われる。

同様に、RPAが「本当に有用である」となれば、いずれOSかクラウドサービスに組み込まれていくと考えられるわけだ。すでにそのような流れになってきている。富士ゼロックスとSAPの新しいサービスの例を挙げてみよう。

富士ゼロックスの文書管理クラウド

富士ゼロックスは2018年12月25日に、文書管理作業を自動化するクラウドサービス「Smart Work Assistant」を提供開始すると発表した。

参照富士ゼロックス、文書管理をクラウドで自動化

「文書や帳票の管理・送付など、日々発生する繰り返し作業を、クラウド上の仮想アシスタントが自動で処理する」ということだ。複合機機やブラウザ画面からインプットするとクラウド上の共有フォルダに適切な名前を付けてアウトプットされたり、送付されたりそう。

途中の処理はクラウド上で自動で処理されるので、複合機とRPAをセットにしたサービスと言える。今までは人手かRPAツールを使って実現していた業務なので、RPAがサービスに組み込まれてきた例の1つとなる。

SAPはデータ入力の自動化機能を提供する予定

2019年第1四半期にもクラウドERP「S/4HANA Cloud」に「インテリジェントRPA」を組み込んで提供するそうだ。ちなみに、インテリジェントRPAとは一般的なRPAツールと会話AIや機械学習エンジンを組み合わせたソフトやサービスのことを指す。そのためにRPAツールを開発する仏コンテクスターを2018年11月に買収している(日経コンピュータ2019.1.10より)。

2017年7月11日にアビームコンサルティングとRPAテクノロジーズが、独SAPの基幹業務システム「SAP ERP」に関わる業務をRPAを用いて自動化するシステム「ERP Automation Robot For SAP ERP」の提供を開始すると発表した。

参照「ERP Automation Robot for SAP ERP」の提供を開始 〜人とロボットの共存を促進し企業の生産性向上を推進〜

クラウドとオンプレミスの違いがあるので、これにより完全にサービスが競合するというわけではないと思うが、「RPAにより自動化される側のソフトウェアが自ら自動化してくる」というケースは今後も増えていくと考えられる。

RPAは溶けてなくなる

このような流れを見ていくと、「RPAツール」として単独で存在するソフトウェアは減ると思われる。僕は上記の例のようにクラウドに吸収されていくという形になると想像している。

もしくは、WindowsなどのOSに最初からGUIオートメーション機能がバインドされてくるのではないだろうか。Windowsにバインドされてきたら、ExcelなどのOffice製品と相性がいいだろうから、既存のIT資産を使いつつ自動化が進むだろう。

【追記】2022/8/16

実際に「Power Automate for desktop」という形で実現しましたね!

Microsoft AzureとWindowsのGUIオートメーションが連携したら、大規模なサーバー型RPAが非常に安価に構築することができる時代が到来する。となれば、単独のRPAツールは消えてしまうのだろうか?小規模な使い方でのRPAツールは残るだろうが、大きな発展はないのではないかと推測する。まぁ単独のRPAツールは消えたとしても、ビジネスの自動化は進んでいくことは確実なので、大きな意味での「RPA(ロボットによる業務の自動化)」は今後も増えていくだろう

みなさんにわかってもらいたいのは、RPAは「どのツールを導入するか」ではなく、「どのサービスを選択し、どう組み合わせ、どうやって全体を一つのシステムとしてコントロールするか」が大事になってくるということ。僕はRPAシステムを複数のOSSを組み合わせて全体を構成することを提唱している。このことは僕の著書『オープンソースで作る!RPAシステム開発入門』で詳しく解説している。

OSSを採用している意味は「無料で試しやすい」という点ももちろんあるが、これからの技術者にとっては「新たに再発明するのではなく、今ある資産を組み合わせて、新たな価値を作ること」が大事だと考えているからだ。OSSのRPAシステムを構築し運用する意味は、「未来のITおよびビジネス全般の在り方を先取りしよう」ということでもある。今の内からサービス、ツールを組み合わせて柔軟なシステム構築を行う発想と技術力を鍛えていってほしい。自力では難しい場合は僕のサービスもあるので利用してください。

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