RPAが注目されているのは何故だろう? RPA導入にはどのようなメリットがあるのか?
という疑問に答えるため、RPAが導入される背景とメリットをRPA導入前の担当者向けにわかりやすく解説します。
RPAが導入される背景
1.人員不足の加速
労働力の中核となる15歳以上65歳未満の生産年齢人口は2000年以降、減少傾向が続いていることが分かっています(図1)。
2013年時点で8000万人を切り、2022年現在では7000万人強と推測されます。10年後には6000万人台、20年後には5000万人台です。
日本の人口減少については以下の記事でまとめているので、ご参照ください。
現在、すでに問題となっている人員不足は、今後ますます企業を悩ます問題となってくる事が明白です。限られた人員で効率的に業務を進めるために業務の自動化が求められています。
2.働き方改革の進行
日本国内で進行中の働き方改革は、RPA導入のもう一つの背景です。2018年に働き方改革関連法案が成立しました。
「労働時間の適正化」について詳しく見ていきましょう。
時間外労働の上限規制
月間および年間の上限:
- 通常の場合、月間の時間外労働は45時間を超えてはならない。
- 年間の時間外労働は360時間を上限とします。
特別な事情がある場合の例外規定:
- 臨時的な特別の事情があり労使の合意のもとであっても、月間の時間外労働は100時間未満、年間720時間以内に抑える必要があります。
- 年間6か月を超える期間で月45時間を超えることは許されません
年次有給休暇の取得義務化
義務化の範囲:
- 全ての企業が、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、少なくとも5日間の有給休暇を取得させることが義務付けられています。
- 労働者が自ら休暇を申請しなくても、企業側から休暇を取得するよう指示されます
RPAが導入される背景
これらの法律は2019年4月より施行され、業務効率化による労働時間の短縮が急務となったことからRPAの需要が高まりました。
3.デジタル変革の加速
デジタル変革の推進
デジタル技術、特にクラウドシステムの導入が進むにつれ、企業内でのデジタル変革が加速しています。この変化には新しい業務プロセスやシステム間の連携が必要とされ、一時的な業務の混乱やつなぎ業務が発生することがあります。
RPAへの期待
- データ処理の自動化: 手作業で行っていたデータ処理や帳票作成をデジタル化し、業務プロセスをスムーズかつ迅速に行うことが可能になります。
- つなぎ業務の自動化: RPAは、新しいデジタルツールやクラウドサービス間のデータ連携や業務プロセスのギャップを埋めるための単純で繰り返し必要な作業を自動化します。
効果と展望
RPAの活用により、デジタル変革に伴う一時的な混乱を最小限に抑え、業務のシームレスな移行と効率化を支援します。また、従業員をより戦略的な業務に専念させることで、組織全体の生産性の向上が期待されています。
4.競争力の強化
市場における競争が激化する中で、企業は常に競争力の強化を求められます。これを実現する手段としてRPAによる自動化が重要な役割を果たします。
業務のスピード向上
RPAを導入することで、繰り返し行われる業務プロセスが自動化され、作業の完了にかかる時間が大幅に短縮されます。例えば、データ入力、請求処理、報告書の生成などが自動で行われることにより、従業員はこれらの時間を他の業務に充てることが可能となります。これは、顧客へのレスポンス時間の短縮や、市場への迅速な対応を可能にし、競争優位性を確保する上で大きな利点となります。
品質の向上
RPAはプログラムされた通りに正確に作業を行うため、人的ミスを削減し業務の品質を一定に保つことができます。この結果、エラーの発生が減少し、品質管理コストの削減や顧客満足度の向上に寄与します。また、品質が安定することで、企業のブランド信頼性が向上し、顧客からの信頼獲得につながります。
生産性の向上
自動化により、従業員が単純作業から解放され、より創造的で価値の高い作業に集中できるようになります。これにより、生産性が向上します。さらに、業務プロセスの効率化は、運用コストの削減にも直結し、企業の利益増加に貢献する可能性があります。
日本の製造業では古くから、生産性改善の工夫を続け成果を挙げてきました。完全にロボット化されたFA(Factory Automation)も最先端の技術を持っているといわれています。そのため、製造業と同様にバックオフィス業務においても生産性改善ができるのでは、と考える経営者も多く出てきました。RPAはFAのバックオフィス版として期待されています。
RPA導入のメリット
RPA(Robotic Process Automation)の導入は、多くの業界で業務効率化、コスト削減、および全体的な生産性向上を目指して採用されています。以下に、RPAの主なメリットを詳しく解説します。
1. 効率の向上
RPAは単調で反復的なタスクを自動化することで、これらの作業を迅速かつ正確に実行します。例えば、データ入力、フォームの処理、レポート生成などの日常的な作業が自動化されることで、手作業での時間を大幅に削減できます。これにより、従業員はより複雑で戦略的な業務に集中することができ、全体の業務効率が向上します。
2. コスト削減
RPAを導入することで、人的リソースにかかるコストを削減できます。自動化により、一部の業務で人の手を必要としなくなり、特に高い人件費がかかる地域や時間外労働が多い業務でのコスト削減が可能です。
さらに、RPAツールは24時間稼働可能であるため、同じ人数でより多くの作業をこなせるようになります。ただし、このようにRPAをフル活用するためには、適切な運用管理体制の構築が不可欠です。以下の点を注意して運用計画を立てることが重要です。
1. システムの監視と保守
RPAツールは自動でタスクをこなしますが、エラーやシステム障害が発生する可能性があります。そのため、24時間体制でシステムの監視を行い、問題が発生した際には迅速に対応できる体制が必要です。特に、プロセスが自動化されている間にデータの不整合や処理ミスがないよう、定期的なチェックが欠かせません。
2. バックアップと災害対策
連続稼働を前提としたRPAシステムでは、データのバックアップと災害対策も重要です。システム障害やデータ損失が発生した場合でも業務を迅速に復旧できるよう、予めバックアップ体制を整え、災害時の対応計画を策定しておく必要があります。
3. 人的リソースの確保
24時間稼働するRPAシステムを効果的に管理するためには、技術的な知識を持ったITスタッフが不可欠です。これには、システムの設定や更新、問題発生時のトラブルシューティングが含まれます。適切なトレーニングとスキルセットを持ったスタッフの配置を考慮することが重要です。
4. プロセスの最適化と更新
RPAを導入する業務プロセス自体も時代とともに変化するため、定期的な見直しと更新が必要です。業務プロセスが変われば、それに合わせてRPAのスクリプトも更新する必要があります。このため、継続的なプロセス改善とRPAスクリプトの最適化が求められます。
3. 品質の向上
RPAはプログラムされた通りにタスクを実行するため、手作業に比べてエラーが大幅に減少します。これにより、データ処理の誤りや不整合が減り、業務の品質が一貫して保たれます。品質の向上は顧客満足度の向上にも直結し、企業のブランド価値を高める効果も期待できます。
4. 柔軟性の向上
RPAは簡単にスケールアップまたはスケールダウンが可能で、ビジネスの需要変動に柔軟に対応できます。例えば、ピーク時にはより多くのRPAボットを稼働させ、需要が減少した時には稼働数を減らすことができます。この柔軟性により、企業は市場の変動に迅速に適応し、機会を最大限に活用することが可能になります。
5. 従業員の満足度向上
退屈で単調な作業から解放された従業員は、より挑戦的で意義のある業務に時間を割くことができます。これにより、仕事への満足度とやる気が向上します。
まとめ
RPA(Robotic Process Automation)の導入は、デジタル技術の進化と市場の要求に応えるだけでなく、人員不足や働き方改革といった現代の労働環境に関連する課題に対処するための重要な手段です。これらの問題は、特に労働集約型の業務を持つ企業にとって大きな課題となっています。
人員不足の問題に直面している企業では、RPAを活用して業務の自動化を進めることで、必要な人手を減らしつつも業務の継続が可能になります。これにより、限られたリソースをより効率的に使用し、人材の不足が影響するリスクを軽減できます。
また、働き方改革の推進においても、RPAは重要な役割を果たします。自動化技術を導入することで、従業員が長時間労働から解放され、ワークライフバランスの改善を図ることが可能になります。これは従業員の満足度の向上に寄与し、結果として生産性の向上にもつながります。
しかし、その導入と運用にはいくつかの注意点があります。
まず、RPAツールの導入に際しては、従業員への適切な教育が不可欠です。自動化技術を理解し、効果的に利用するためには、社員がRPAソフトウェアの操作方法を習得し、それを業務にどのように活かせるかを把握する必要があります。教育プログラムを通じて、従業員のスキルを向上させることで、RPA導入の効果を最大限に引き出すことが可能になります。
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次に、24時間稼働が可能なRPAですが、その持続的な運用を保証するためには、適切な運用管理体制の構築が必要です。これにはシステムの継続的な監視とメンテナンスが含まれ、障害が発生した際の迅速な対応や、システムアップデートといった運用面の管理が求められます。運用管理体制を整えることで、RPAのシステムが長期間にわたり安定して機能し続けることを確保できます。
これらの注意点を考慮することで、RPAの導入は単なる業務の自動化を超え、企業が直面する様々な課題に対して、戦略的な解決策を提供する重要なツールとして機能します。