RPAツールを社内展開するときに、各部署から「自動化できる業務」を出してもらうという手法を使うことが多いですが、「ほとんど提案がもらえない」のではないでしょうか?
私もRPAを始めた2017年頃、顧客の会社で説明会を実施してもらったことがありますが、2件程度しか集まりませんでした。
なぜ業務自動化案件は集まらないのでしょうか?
現場は何が自動化できるかわからない。なぜなら…
現場からは、必ず「何が自動化できるかわからない」という答えがあります。これは丁寧にRPAについて説明しても、事例・実例を見せても、やっぱり「わからない」のです。
なぜでしょうか?
根本的な仕組みから考えてみましょう。
まず会社を創業する時は売りたい商品があり、ビジネスモデルを考えます。その後、ビジネスプロセスができあがってきて、部署が必要となり、部署内に「業務」が発生してきます。業務が固まってきたら業務システムを導入したりして自動化が進みます。
簡単に図にすると下図のようになります。

業務を行う人は、業務を行うために雇われますから、その業務を行うのが仕事です。非効率的であろうと、面倒だろうと仕事なので働きます。そこに「自動化できる業務はありますよね」と言われても、思考のベクトルが違うわけです。
自動化は自分の仕事じゃないし、わからない、となっても不思議ではありません。そもそも業務を行うために雇われているのに、その業務を「自動化して無くしてしまう」ということに積極的なわけがありません。
自動化を考えるのはRPA担当者
では、経営層が「自動化できる業務」を考えるべきでしょうか?それなら部分最適化にはならず、全体最適化の自動化が考えられるでしょう。しかし、経営層はそういう仕事ではありません。もっと何年も先を読んでビジネスの布石を打ったりしないといけませんね。
つまりはITに精通し、業務もわかる人が主導していくしかありません。
仮にこの人を「RPA担当者」とします。
経営者は適切なRPA担当者を任命することが重要な仕事になります。
どこに着目してRPA案件を見つければいいのか?
経営者としては、どのような人材がRPA担当者に適切なのかを判断するためにも、「RPA担当者が何をするべきなのか」を理解しておく必要があります。
さて、RPA担当者はどういう視点で考えて手を打っていくべきでしょうか?
私は1つの考え方として、「データ基盤」に着目するとよいと思います。
ビジネスモデル→ビジネスプロセス→業務ときて、最終的にデータベースに結果が入ります。ビジネスが変わると業務は変化しますが、一番下のデータベースはほとんど変わりません。これは「基幹システム」と言い換えてもいいです。
業務はすぐに変化するので、必ずデータベースとの間にギャップが生じてきているはずです。
この「ギャップ」に着目するのです。

ギャップの種類として、
- 業務とデータベースのギャップ:業務の変化に基幹システムが対応できていない
- 業務と業務のギャップ:基幹システムがそもそも対応しないからExcel等でやっている
- データベースとデータベースのギャップ:基幹システムが複数あって同期が必要
などが見えてくるはずです。
それを手作業で行っているなら、そこに着目して自動化すればいいではないでしょうか。
【参照】RPAによる自動化の類型
なぜRPAで自動化するのか?
「なぜRPAで自動化するのか」と言えば柔軟性があるからです。システム化してしまえば、今後の変化に対応するのが遅くなるし、費用もかかります。最初から変化があることを前提としてRPAで開発すればギャップに安価で早く対応できる可能性が高くなるわけです。
この視点で自動化に取り組めば、現場は業務を奪われるわけではなく楽になります。
現場を巻き込んだRPA化
この3つのギャップを埋めることを前提に現場に説明し、案件をリストアップしてもらいます。「あなたの業務の中で自動化できる業務を出してください」と言うより、何倍も解像度が上がった説明ができるでしょう。
つまり「業務を自動化して奪ってしまう」わけではなく、「ギャップが生まれて上手く動かなくなった仕事の流れをRPAでつないでスムーズにする」のです。
それを現場と経営者が一体になって進めると理解されたときに、RPA化が進捗し始めます。
もちろん会社によっては各部から次々自動化案件が出る場合もあるでしょうけど、そうじゃないというときはご一考ください。