業務効率化しても給料が増えない。増えるのは仕事だけ。たしかに。

「業務効率化しても給料が増えない。増えるのは仕事だけ」みたいなポストがバズってたよと妻から聞きました。「ほんとにそうやな」と思って笑ってしましたね。効率化ってそういうことですね。

じゃあ、自動化ってなんなのか?というのを少し考えてみようと思います。

本来したい仕事ができない?

実際の自動化案件は「本来したい仕事があるのに、手作業に手間を取られてできないから自動化してほしい」という話が多いです。「業務効率化しても仕事が増えるだけ」みたいな人って、ちょっと思いつかないけど、効率化ありきで現場に話を持っていくと、「業務効率化しても給料が増えない。増えるのは仕事だけ」という現象が起きるかもしれませんね。

基本的に現場が自動化したい仕事って「本来したい仕事があるけど忙しくてできない」パターンです。

たとえば「バイヤーとして商品を吟味したり売れ行きを細かく分析したりするのに時間をかけたいけど、発注書を作成するだけで1週間が終わってしまう」というケース。だから「発注書を作る単純作業部分を自動化してほしい」という要望があります。

従来の働き方では、「できなかったことが時間ができて可能になる」というのが自動化の1つの形ですね。

実は本来したい仕事はしない

でも、これも実はそこまで機能しないんですよね……。

単純作業部分を自動化したとしても、それによって生まれた時間で本来するべきことをするとは限らないからです。また別の単純作業を探し出して始めてしまうか、同じ仕事を増やしてしまうんです。

たとえば、前述の発注書の例だと「発注書作成を自動化した」ので「もっと多くの商品を取り扱うようになる」のです。1人のバイヤーで100SKUを担当していたのが、10倍のSKUを担当するようになり、忙しいままで、売れ行き分析などできないという状態に戻ります。

本来自分の「やるべき仕事」ができていなかった人は、自動化しても「やるべき仕事」はやらないんじゃないかな、というのが僕の経験則です。

「やるべき仕事」をやる人は自動化していなくてもやっていたんでしょう。自動化できる作業は人を雇ってやってもらう、という解決策もあったわけで、それをやっていなかったのですからね。

また振り出しに戻ってしまいました。

自動化の2つのポイント1「やるべき仕事の方を自動化する」

では自動化は意味がないのか?ということになりますが、僕は2つポイントがあると思います。

1つは「やるべき仕事の方を自動化する」ことです。「自動化することによって、本来自分がやりたかったことをやる」のではなく、自分はほぼそのままで、「やるべきだけどやっていない仕事の方」を自動化します。

納期通知業務の例

たとえば、「店舗が受注した商品の納期をメーカーに入力してもらったので、それを店舗に伝える」という業務があったとします。何十店舗もあれば作業が大変なので、Excelで一覧管理してシェアポイントにアップするわけです。

その一覧表から該当店舗を選択して一店舗ずつメールするのはかなり手間です。なので「シェアポイントを勝手に見て確認して」と店舗には言っておくんですね。

でも、店舗側はいつ納期が更新されるかわからないので、毎日シェアポイントにログインして、該当ファイルを見つけないといけません。そのファイル内から自店舗を見つけて、という作業が発生します。

この面倒な手順も忘れてしまうし、新しい従業員はそのことを知らないかもしれません。知っていても作業時間がかかるので、忙しい店舗の従業員は本社に電話してきます。本社側は電話を受けて答えるのに工数がかかりますね。

店舗側も本社側も大きな時間がこの簡単な業務によって割かれています。本来、納期更新があった場合、一店舗ずつ通知していれば、店舗側は問い合わせる必要はないわけです。本社側もわかっているけど、そんな時間はないです。

こういうケースの場合、1週間に2回ほど自動化を走らせて、納期更新があったデータだけを拾って、店舗ごとに分けて、該当する店舗にメール送信すればいいですね。ポイントはメールに添付するのではなくて、メール本文にExcelのイメージごと貼り付けてあげる。こうすると店舗側はひと手間省けます。

OutlookとExcelを使えばイメージを本文に貼り付けられます。Wordのライブラリが必要なので一度Wordを経由すればよかったと思います。RPAでえっちらほっちらやってもできるでしょうけど、遅いのでVBAですね、こういうのは。

このように、本来やっていればよかった「店舗への納期通知」を完全自動でやってしまえば、店舗からの問い合わせは劇的に減りますし、「受注データの登録が間違っているよ」とか店舗側が知らせてくれたりするようになります。店舗側も確認が楽ですからね。

本社側の人たちの問い合わせ対応業務も減らせて楽になるわけなので、「やるべき仕事の方を自動化する」というのは、実際には行う仕事は増えてるけど、人間の工数は一切増えてないので損しないですよね。給料はあがらないと思いますけど。で、もう1つのポイントは……

自動化の2つのポイント2「会社を加速させる」

もう1つのポイントは「会社を加速」させるということです。

自動化は効率化ばかり言われるのですが、業務を早く進めるという「時間」について言われることはあまりありません。

これは単純にRPAを実行したら、バババっと作業をやってくれる、という「早さ」ではなく、月曜日に会社に来たら、もう発注書がデキてる、とか先週の売上分析レポートが完成してメールで送られてきている、という早さです。

月曜日の朝からデータをダウンロードして、帳票作って、会議して、とかをすっ飛ばして、いきなり仕事をスタートできるわけです。月曜日の朝なんか、みんな作業をスタートさせるから基幹システムからデータをダウンロードするだけで、何十分も待ったりしてませんか?

そういう無駄な時間を無くして、数時間、下手したら1日早く仕事ができるわけです。

もし発注を1日早くできるとしたら、回転の早い業態だと在庫日数を1日少なくできる、ということですよね。つまり在庫削減になります。大きな規模の会社なら何億という単位で削減ができてくるわけです。

時間を削減できるということは、億の利益を生み出す可能性があるわけで、「業務効率化だー」という話ではないのです。

ただし、もちろん月曜の朝一から帳票を用意するためには、業務時間前の完全自動化が必要です。環境の構築はもちろん、運用要員も必要です。ここらへんは、完全自動化の理論をお読みいただければと思います。

「可能」と「加速」がポイント

まとめて言うと「可能」と「加速」これが自動化のポイントだということです。「単純作業を効率化して~」という話は、この「入り」にすぎません。

「RPAは業務効率化できて仕事が早く終わります」みたいな話をそのまま真に受けて、それだけ考えて「業務効率化しても給料が増えない。増えるのは仕事だけ」とか言っても意味が無いんです。揚げ足取りみたいな話なんですよ。

それに、まずは単純な作業を自動化するくらいの技術がないと、何もできませんし。だから「入り」として、「簡単に効率化できますよ」くらいから入口を見せて、それさえできないようだったら、さっさとあきらめてもらう、ということですよ。

裏側は「時間」と「ボトルネック」

さて、自動化を活かすポイントを「可能」と「加速」と言いましたが、実はこれはまだ表の話。

その裏側は「時間」と「ボトルネック」に着目しているんですね。決して「作業の効率化」ではありません。「時間」と「ボトルネック」について「ザ・ゴール」のシリーズで書かれているので、お読みください。

「ボトルネック」に集中して「時間」が生み出す利益に目がいけば、自動化は主にそのボトルネックの解消と時間を生むことに使えばいい、ということがわかると思います。そうすれば多くの自動化をする必要はなく、少数の自動化で効果を得ることができますね。

ただし、本当に効果を得るには環境を整備し適切な開発をして、運用を続けられるだけの技術力が必要になってきますので、「誰でも簡単に」とはいきません。誰でも簡単にできることに価値はないのです、当たり前ですけど。その第1ステップとして簡単に入れるRPAツールはいいよね、というだけです。

業務効率化は意味がない

結論として、自動化で生まれるのは「業務効率化」ではなく、不可能だった仕事を可能にすること、そして会社を加速させることなので「今までと全く違う仕事の質に変化する」ということですね。

仕事の質が変わるので「効率化」したかどうか図りようもないです。それが当たり前になって、昔の業務がなんだったのか知る人がいなくなるくらいが自然です。

これで給料が上がるかどうか知りませんが、自動化に関わる人はそういう面白さを求めて行けばいいんじゃないでしょうか。

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