
Power Automate for desktopには、どういった活用方法があるの? 活用事例を知りたい。そこからヒントを得たい!
といった悩みに答えます。
- Excelの一括コピーと名前変更
- Excelファイルを選択して起動
- システムへのログイン操作
- Webシステムデータ加工業務
- ExcelデータのWebシステム登録業務
- スクレイピングデータのメール送信業務
- PDFの請求書の金額取得業務
この記事を書いている僕は、Power Automate for desktopを仕事に使っていますし、本も書いています。
>>Power Automate for desktop業務自動化最強レシピ – RPAツールによる自動化&効率化ノウハウ
自分の周りに、同じ業務を見つけられたら、使ってみてくださいね。
応用するヒントも書いています。
1つ1つの事例を詳しく解説しているので、ぜひお読みください。
それでは、どうぞ!
1. Excelの一括コピーと名前変更


基幹システムからダウンロードしてきたExcelファイルがダウンロードフォルダーに保存されているので、共有フォルダーにコピーするとともにファイル名に日付を加える。
という業務を自動化しました。
業務の詳細は?
この業務をわかりやすいように、図で示すと、こんな感じ。

ダウンロードフォルダーの[売上.xlsx]を、共有フォルダーにコピーして[売上20221201.xlsx]という名前に変更しています。
[在庫.csv]も同じように処理。
この業務の課題は?
この作業は、単純かつ簡単ですね。
そして、「よくある作業」だと思います。
、、ですが、操作するファイルの数が増えると、とてもメンドクサイ……。
しかも、毎日。
- 該当のフォルダーを開く
- 日付を考える
- ファイル名を変更する
カンタンとはいえ、ストレスです。
Power Automate for desktopで自動化すると?
この業務をPower Automate for desktopで自動化すると、
コンソールの実行ボタンをクリックするだけ
で完了、です!
応用例は?
応用としては、
- 基幹システムからExcelファイルをダウンロードするところも自動化する
- 共有フォルダーに日付毎のフォルダーを作って、そのフォルダーにコピーする
- Zip形式に圧縮して、名前を付けて保存する
- コピーし終わったら、担当者にメールする
など。
すべて、Power Automate for desktopで自動化することができますよ。
2. Excelファイルを選択して起動

メンテンナンスの依頼を受けると、Excelファイルを開いてメンテンナンスする業務。メンテンナンスするExcelファイルは内容によって異なる。
という業務を自動化した事例です。
業務の詳細は?
図で確認しましょう。

依頼者が「分類Aの変更をお願い」とメールで依頼してきたら、作業者がそれを受けて分類Aのファイルを開いて指定カ所を変更するという業務です。
この変更が分類Aだけじゃなくて、分類Bのとき、分類Cのとき、
という具合に、複数の種類あるわけです。
このように、依頼を受けて各種ファイルを更新するのは、マスタメンテナンスの業務でよくあるパターンです。
なんで、こんな業務を?






なんで依頼者が、自分でファイルをメンテナンスしないの?
たしかに……。
でも、マスタファイルのメンテナンスは、1人がコントロールしないとぐちゃぐちゃになる可能性があるんですよね。
たとえば、
- 余計な文字(改行コードや特殊文字など)が入力されてしまう
- 数値の桁数が多くて「E+11」みたいに表示されてしまう
- 全角と半角が混ざってしまう
このように、マスタファイルのメンテナンスに失敗すると、、
マスタファイルを利用するシステムが、エラーで止まってしまう
ことが考えられる、というわけ。


なるほど、ね
この業務の課題は?
この業務の課題は、
ファイルの保存場所を開かないといけない
ということ、です。
こういったマスタメンテは不定期に依頼を受けるので、そのたびにファイルの保存場所を探す手間がかかります。
他のなんらかの作業をしているわけなので、、
その作業を中断して、頭を切り替えないといけません。
Power Automate for desktopで自動化すると?
この業務を改善するために、Power Automate for desktopで自動化します。

フローを実行すると、
- ダイアログが表示されて「どのファイルを開きますか?」と聞かれる
- 該当するファイルを選択する
- 該当するファイルが、画面上に表示される
という流れ。
これによって、
- ファイルの場所(パス)を思い出す必要がない
- ファイルを探す時間が削減される
ということで、ストレスがかなり軽減されます。
こういう細かい自動化が、業務を早く正確に、そして楽にこなすために役立ちます!
応用例は?
応用として、
- 対象のファイルを柔軟に増減できるように、外部ファイルにファイルの情報を持つ
- 対象のファイルを開いた後に、作業しやすい状態にする
が、考えられます。
3. 基幹システムへのログイン操作

毎日、会社の基幹システムにログインしている。
という業務を自動化した事例です。
なんで、こんな業務を?
「基幹システムログイン」というフローを作って、実行するだけです。






これを自動化することに、意味があるの?
……そう、思うかもしれませんが、大きな意味があります。
それは、、
このフローを「再利用」するから。
「基幹システムログイン」は色々な場面で使いますから、一度作っておけば複数のフローから呼び出して使うことができるのです。
ログインだけでも、意外と複雑……
加えて、「基幹システムログイン」は結構面倒な手順が必要となっていました。
この会社の基幹システムは、クラウドサービスを利用しているし、子会社も複数あるという状況なので
- インターネットにつなぐときに、ユーザーとパスワードを求められる
- 基幹システムにログインするときに、ユーザーとパスワードを求められる
- 子会社を含め複数の会社の業務を行うので、アカウントを切り替えないといけない。よってブラウザーにアカウントを記憶させておいて使うと不都合がある
このように「ログインするだけ」といっても簡単じゃなかったわけです……。
読者さんの中にも「慣れちゃって、メンドウなことに気付いていない」ってことがあるかもしれませんね。それは自動化のチャンスですよ。
4. 基幹システムデータ加工業務

基幹システムから売上データをダウンロードしてきて、ローカルのExcelファイルと突合して別のExcelファイルを作成する。
という業務を自動化した事例です。どの会社でもよくあるパターンの業務なので参考になるかな、と思います。
業務の概要は?
この業務の概要を図で書くと、下図のようになります。

[担当者一覧.xlsx]は、この業務を行う人のパソコンに保存されていて、随時メンテナンスされています。
このExcelファイル[担当者一覧.xlsx]には、顧客とその営業担当者が、一覧で管理されています。「株式会社○○の担当者は、営業部の田中さん」といった情報です。
業務の手順は?






もう少し詳しく、この業務の手順を解説しましょう
- 基幹システムから[売上.csv]をダウンロードしてきたら、Excelで開く
- [担当者一覧.xlsx]もExcelで開く
- [売上.csv]にある[顧客コード]と、[担当者一覧.xlsx]の[顧客コード]で関連づけて、[売上.csv]に[担当者一覧.xlsx]の情報(担当者コード・担当者名)を付け加える
- Excelの計算式のままだと、保存後のファイルで正しく表示されなくなるので、計算式を値に変換する
- [売上.csv]に名前を付けて、Excelファイルとして保存する
Excelは、共有フォルダーに保存するので、各営業担当者が閲覧して、自分の売上を確認する決まりになっています。






こうやって聞くと、かなり、ややこしい業務ね
そうですね。だからこそ自動化が有効なんですね。
Power Automate for desktopで自動化すると?
Power Automate for desktopで自動化したフローの概要は下記の通り。

意外にすっきりしていますね!?
[Webシステムにログイン]という部分は上記の「基幹システムへのログイン操作」で解説したフローを再利用しています。
Power Automate for desktopには[Desktopフローを実行]というアクションがあり、このアクションを使うと別のフローを呼び出して利用することができるので、この仕組みを使っています。
また、上のフロー図では単純化していますが、実際にはこのフローを子会社の数分繰り返して行うように自動化しています。
下図のような感じです。

Power Automate for desktopを実行してほっておけば、一連の業務を10分程で完了してくれます。
その間パソコンはPower Automate for desktopに占有されてしまうので、パソコンを使わない作業を行っています。
5. 顧客データのWebシステム登録業務
Excelファイルで一覧化している大量の顧客データをWebシステムに登録する(WebシステムはCSV一括登録できない仕様になっている)。
という業務を自動化した事例です。使用頻度は低いフローですが効果はバツグン。似た業務があるならおすすめです。図で書くと下図のようになります。
業務内容はシンプルです。[顧客一覧.xlsx]にある顧客データをWebシステムに1件登録して、登録後に取得できる登録番号を[顧客一覧.xlsx]に書き戻す、これを顧客データ分ひたすら繰り返す業務です。
シンプルですが、顧客データは数百件あって日々増えています。この作業のために派遣社員を1人雇おうかとしていたくらいです。これこそPower Automate for desktopの価値が発揮できる案件だと思いませんか?






実際、この企業の役員の人から大変喜ばれました
派遣社員1人分の人件費がセーブできたからではありません。顧客データをWebシステムに登録することで、あとの戦略が実行できるようになったからです。「派遣社員を面接して、契約して、登録方法を教えて、やってもらう」となると、登録が何週間後になるかわかりません。下手すると何カ月後になっていたかもしれません。これを数日後には実行できるようになっていたわけですから、喜ぶのも当然だと思います。
6. スクレイピングデータのメール送信業
Webシステムでデータを検索し、画面に一覧表示させる。一覧表示されたデータをコピーしてExcelに貼り付けて保存。そのExcelファイルをメールで担当者に送る。
という業務を自動化した事例です。図で書くと下図のようになります。
スクレイピングとは情報を収集して加工する技術のことです。このWebシステムはデータの一括ダウンロード機能が付いていないので、直接画面からデータをスクレイピングするしかない…。古いシステムなので、ダウンロード機能を付けてもらうためにシステム改修すると、それだけで50万円以上の費用がかかるため断念した過去があるという、、。
さて、スクレイピングしたデータはCSVファイルとして保存して、このデータを必要としている担当者にメール送信します。Power Automate for desktopには[Webページからデータ抽出する]アクションがあり、複数ページにまたがるデータも一括して取得することができるので、このアクションを使っています。
メール送信するには、Outlookを利用しています。Outlookを普段使っている人であれば、メール送信サーバーの設定も行う必要がないため、[Outlookからのメールメッセージの送信]アクションを使うと早い!
Webシステムから複数ページに渡るデータを手作業で抜いていた昔には、もう戻れませんな!
7. PDFの請求書の金額取得業務
メールで送られてくるPDFの請求書の内容をExcelに転記する業務。転記する値は「請求書番号」「請求元企業名」「請求金額」の3点。
という業務を自動化した事例です。
複数の企業から同じフォーマットで請求書が送られてくるので、値を取得する処理は共通化できます。請求書のイメージはこのような感じです。2社とも同じフォーマットですね。最近はクラウドサービスを使う企業が増えてきており、同じフォーマットで送られてくるパターンが増えています。
同じフォーマットで送られてくるのでバラバラのフォーマットの請求書を管理するよりは楽なのですが、やっぱり管理のために一覧表を作る必要があるため、手作業でこの業務を行っていました。
そこでPower Automate for desktopで自動化しました。図で書くと下図のようになります。
Power Automate for desktopにはPDFからテキストを抽出するためのアクションが複数存在します。表形式のまま取得するときは[PDFからテーブルを抽出する]アクションが便利。表形式のデータをデータテーブルに取り込んで使うことができます。
しかし、この事例の請求書は表形式では取り込めなかったので、[PDFからテキスト抽出]アクションを使いました。テキスト抽出するとこのようにPDFの中身がテキストとして取得できます。
この中から「請求書番号」とか「請求元」とかを取り出すわけですが、そのためには[テキストの解析]アクションを使いました。






簡単に欲しい値が取り出せるのかな?
「正規表現」を使えば取り出せるよ。ネット検索すれば情報は出てくるよ






欲しい値が取得出来たら、Excelに転記して一覧表を作って終了です。
お互いデータだけで請求書をやり取りできれば、こんなフローは作らなくていいのですが、なかなかそうはならず…。Power Automate for desktopの活躍はまだ続きそうです。
まとめ

はい!ここまで、7つのPower Automate for desktopの活用事例をご紹介しました。
実は業務のパターンというのは、そんなに多くあるわけではありません。
僕は25年以上にわたって、多くの企業内で業務改善に関わってきましたが、だいたい同じような業務です。細かい箇所が違うだけ。
だから、この7つの活用事例で、十分、
あなたの自動化のヒントになると思います。






でも、、どうやって作ればいいの?
Power Automate for desktopを活用したくなったんだね!
すばらしいっ!






Power Automate for desktopの使い方を早く身に付けたいなら、
本で勉強しちゃうのが、一番かと思います。
次の記事で僕のおすすめ本を紹介しているので、参考にしてください!
>>Power Automate Desktopのおすすめの本5選