企業の会計・経理部門で行われる「振込依頼データの作成」業務は、給与や経費精算、取引先への支払いなど、あらゆる振込の基盤となる重要なプロセスです。その中でも「振込対象の確認」は、最初のステップでありながら、業務全体の正確性と効率性を左右するポイントとなります。本記事では、振込対象の確認業務を効率化・自動化する方法について、より詳しく解説します。
振込依頼データ作成のための振込対象の確認業務
業務の概要
振込依頼データ作成全体は、振込の計画から実行までの一連のプロセスを指します。これには、振込計画の立案、振込対象の確認、振込データの作成、承認プロセス、そして実際の振込操作が含まれます。たとえば、月初に振込スケジュールを設定し、必要な情報を逐次確認しながらデータを作成するというタイムラインが一般的です。この中で「振込対象の確認」は、振込すべき対象の情報を収集し、それを整理する重要なステップとなります。
- 振込対象データの収集
会計システムや経費精算システム、請求書リストなどから、振込先や金額の情報を収集します。このデータは、振込期日や優先度に応じた条件で抽出されることが一般的です。 - データの精査と確認
振込先情報や金額の正確性、振込期日などを確認します。特に大口取引先の支払いや税金関連の支払いについては、より入念な確認が求められます。 - データの分類
支払の種類(給与、経費、取引先支払など)や優先度に応じてデータを整理します。さらに、業務内容に応じて独自の分類基準を設定することも可能です。 - 確認レポートの作成
振込対象データをわかりやすい形式でレポート化します。このレポートは承認プロセスを効率化するための重要なツールとなります。
業務の課題
振込対象の確認業務には以下のような課題がつきまといます。
- 手作業によるミス
データの転記や確認漏れが発生しやすく、振込ミスや重複が問題となります。たとえば、口座番号の入力時に一桁間違えると、振込が失敗して支払先からクレームが発生し、信用問題に発展するケースがあります。特に、口座情報の入力ミスは振込遅延や信用問題に直結します。 - 時間のかかる作業
データの収集、整理、確認は膨大な時間を要します。特に、月末や期末の忙しい時期には、この作業が他の業務を圧迫することがあります。 - 業務の属人化
担当者の経験やスキルに依存しがちで、作業の引き継ぎが難しい。特定の担当者に負担が集中しやすい点も問題です。 - 不整合なデータの対応
データ形式が統一されていない場合、手作業で修正が必要になることがあります。これにより、さらなるミスのリスクが高まります。
Power Automate for desktopによる解決
こうした課題を解決するために、Power Automate for desktopを使った自動化が有効です。具体的な自動化ポイントと手順を以下に説明します。
1. 振込対象データの抽出
- 手作業
システムから条件を指定してデータを手動でエクスポート。複数のシステムを横断する場合、さらに時間がかかります。 - 自動化
Power Automate for desktopを使い、会計システムや経費精算システムに自動ログインしてデータを抽出します。この自動化により、従来30分以上かかっていたデータ抽出作業がわずか数分で完了します。条件設定もスクリプトに組み込むことで、特定の振込対象を自動取得可能です。
2. データの精査
- 手作業
振込先や金額の確認、重複チェックを手作業で行います。細部の確認には特に時間がかかります。 - 自動化
振込先名や口座番号の形式チェック、金額の異常値確認(例:マイナス金額の検出)を自動で実行します。Excelの関数やPower Automate for desktopの条件分岐を活用します。また、不整合なデータを検出した場合には、別ファイルにエラーリストを出力し、担当者へ通知することも可能です。
3. データの分類
- 手作業
支払種類や優先度ごとにExcelシートを分割します。この作業には多くの時間と注意力が求められます。 - 自動化
データをカテゴリや優先度でソートし、振込期日が近いものをリスト上部に配置する処理をPower Automate for desktopで実行します。さらに、分類基準を動的に変更できるように設定することで、柔軟な運用が可能です。
4. レポートの作成
- 手作業
振込データをまとめ、確認担当者にメール送信します。このプロセスでは、フォーマットの統一が難しい場合もあります。 - 自動化
振込リストを自動でフォーマット化し、確認用のレポートを作成。さらに、Outlook連携で担当者にメール送信を自動化します。メールには進捗状況や確認期限の通知を含めることも可能です。
自動化のメリット
- 正確性の向上
手作業に伴う転記ミスや確認漏れを防ぎます。自動化によりデータの信頼性が大幅に向上します。 - 効率化
短時間で正確な振込対象リストを作成可能です。たとえば、1,000件以上のデータセットを数分以内で処理できるため、これまで手作業で1時間以上かかっていた作業を大幅に短縮できます。 - 属人化の防止
誰でも同じ品質で作業を行えるため、引き継ぎが容易。業務の標準化が進みます。 - プロセスの透明性向上
自動化によって作業の進捗状況をリアルタイムで把握可能となり、管理者の負担を軽減します。
まとめ
振込対象の確認業務は、会計・経理部門の効率を左右する重要なプロセスです。手作業で行うには時間と手間がかかり、ミスが発生するリスクもあります。しかし、Power Automate for desktopを活用すれば、自動化によって業務の精度を高めつつ、作業時間を大幅に短縮することができます。
もし振込業務の効率化に課題を感じているなら、ぜひ自動化の導入を検討してみてください。このような小さな改善が、部門全体の生産性向上に大きく寄与します。また、プロセスの可視化が進むことで、例えば特定の工程で無駄が生じている箇所や、作業の重複が発見できるようになります。こうした気づきから、さらなる効率化や作業の簡略化といった改善が可能になるでしょう。