毎日行われる在庫データのダウンロードと保存は、物流・在庫管理における重要な業務の一つです。発注計画や在庫状況を正確に把握するためには、最新のデータをCSV形式やExcelファイルで管理することが一般的です。しかし、手作業でデータをダウンロードし、加工・保存する作業は時間がかかる上に、効率が悪い場合があります。
この記事では、Power Automate for Desktopを活用して、在庫データの加工と保存を自動化する方法をご紹介します。これにより、作業時間の削減や正確性の向上が期待できます。
在庫データの加工と保存
業務の概要
在庫データのダウンロードと保存は、物流や在庫管理の基盤となる重要な業務です。この業務は以下の手順で進められることが一般的です。
- 在庫データのダウンロード
業務システムや外部データベースから、日々の在庫データをCSV形式やExcelファイルとして取得します。 - データの加工
ダウンロードしたデータを基に、不要な列や行を削除し、必要な形式に整えます。特定の商品情報やカテゴリーごとにデータを分ける場合もあります。 - データの保存
加工後のデータを、社内の共有フォルダやクラウドストレージに保存します。これにより、他部門やチームメンバーとデータを共有しやすくなります。
業務の課題
- 作業の重複
複数人が同じデータをダウンロードして加工することで、業務システムに負荷がかかる上、作業自体が無駄になるケースがあります。 - 手間と時間の浪費
大容量のデータをダウンロードするのに時間がかかり、データ加工や保存作業にも多くの労力が必要です。 - ヒューマンエラーのリスク
手動で作業を行うため、誤操作やデータの不整合が発生しやすく、正確な在庫情報が共有されないリスクがあります。
Power Automate for Desktopによる解決
Power Automate for Desktopを利用すると、以下のような形で在庫データの更新作業を自動化できます。
- データのダウンロードを自動化
業務システムにログインし、データをダウンロードする操作を記録・再現します。自動化により、システムへの負荷を抑えながら効率よくデータを取得できます。 - Excelでの加工を自動化
ダウンロードしたデータをExcelで開き、不要な列や行の削除、データのフィルタリングなどの加工を自動化します。ただし、データ件数が非常に多い場合、Excelでは処理が遅くなる、または対応できないことがあります。その場合は、データベースやETL(Extract, Transform, Load)ツール※1を活用して、効率的にデータを加工・管理することも検討する必要があります。 - 共有フォルダへの保存を自動化
加工後のデータを指定のフォルダに保存します。ファイル名にタイムスタンプを付与することで、データの管理もしやすくなります。 - 通知機能で完了を知らせる
保存完了後にメールやチャットで通知を送信し、関係者全員に作業が完了したことを共有します。
※1 ETLツールとは
ETLツールは、データを抽出(Extract)、変換(Transform)、格納(Load)するプロセスを効率化するツールです。データベースやファイルなどのさまざまなソースからデータを取り出し、不要な部分を削除したり形式を整えたりして、最終的に必要な場所に保存します。
Excelでは処理が難しい大量データを短時間で扱えるため、大規模なデータ処理や複雑な変換が必要な場面で活用されます。代表的なツールには、Talend、Microsoft Power Query、Informatica、DataSpiderなどがあります。
ETLツールを使うことで、作業の効率化やデータの正確性向上が実現します。弊社ではPentaho Data Integrationを使用することが多いです。
自動化のメリット
- 時間の大幅な節約
手動作業を自動化することで、毎日の作業時間を削減できます。例えば、1日30分の作業を削減できれば、年間で120時間以上の時間を節約できます。 - 作業の正確性向上
手順が標準化されるため、ヒューマンエラーが減少します。一度フローを作成すれば、毎回同じ正確な処理が行われます。 - システム負荷の軽減
複数人が同時に作業を行う必要がなくなるため、業務システムへの負荷を軽減できます。 - 業務の効率化
自動化によって単純作業から解放されることで、より価値の高い業務に集中できるようになります。
在庫データを基に行われる業務
ダウンロードした在庫データを活用して行う業務には、以下のようなものが考えられます。これらの業務を効率的に行うことで、物流・在庫管理の精度や効率を向上させることができます。
1. 在庫状況の可視化
- 概要: 在庫データを基に、現在の在庫状況を確認・共有する。
- 活用例:
- 売れ筋商品や滞留在庫の把握。
- 在庫不足や過剰のアラート設定。
- 日次、週次、月次での在庫推移レポート作成。
2. 発注計画の立案
- 概要: 在庫データを基に必要な商品を適切なタイミングで発注する。
- 活用例:
- 最低在庫量を下回る商品の自動発注フロー作成。
- 季節や販売トレンドを考慮した発注量の調整。
- 発注先ごとの優先順位を考慮した最適な発注計画作成。
3. 在庫回転率の分析
- 概要: 在庫データを基に商品の回転率を分析し、効率的な在庫管理を実現する。
- 活用例:
- 回転が遅い商品の特定と原因分析。
- 高回転率商品への補充計画の強化。
- 倉庫スペースの最適化。
4. 倉庫管理業務
- 概要: 在庫データを利用して、倉庫内の配置や動線を最適化する。
- 活用例:
- 商品ごとの入出庫履歴の確認。
- 倉庫内の商品配置変更(ピッキング効率向上)。
- 入庫予定商品のスペース確保計画。
5. 販売予測と連携
- 概要: 販売データと在庫データを組み合わせて将来の需要を予測する。
- 活用例:
- 販売予測に基づく在庫補充計画。
- プロモーションや季節イベントの影響を考慮した在庫調整。
- 突発的な需要増に対応するためのシミュレーション。
6. コスト削減の施策
- 概要: 在庫データを分析して在庫管理コストを削減する。
- 活用例:
- 不要な在庫の削減による保管コストの最適化。
- 輸送回数の見直しによる物流コスト削減。
- 廃棄リスクの高い商品の優先販売。
7. データ品質管理
- 概要: 在庫データの正確性を維持し、他の業務での活用精度を向上させる。
- 活用例:
- 入庫・出庫時のデータチェックと修正。
- 定期的な棚卸しとデータの突合。
- システム上の在庫と実際の在庫の差異を分析・修正。
8. サプライチェーン全体の最適化
- 概要: 在庫データを活用し、仕入れから販売までのプロセスを改善する。
- 活用例:
- サプライヤーと共有することでリードタイムの短縮。
- 複数倉庫間での在庫の最適配置。
- サプライチェーン全体のコスト削減と効率向上。
まとめ
在庫データの加工と保存をPower Automate for Desktopで自動化することで、時間の節約、作業ミスの防止、業務効率の向上が実現します。特に、大容量データを扱う物流・在庫管理業務では、このような自動化の効果が顕著に表れます。
このツールを活用し、日々の定型作業から解放されることで、より重要な業務に集中できる環境を整えてみてはいかがでしょうか。自動化は一度構築すれば継続的な効果をもたらします。ぜひ、導入を検討してみてください!