RPA活用ガイド2025:業務自動化から独自アプリ開発までの完全解説

RPA(Robotic Process Automation)は、単なる業務の自動化ツールを超え、企業の業務効率化や生産性向上に欠かせない存在として急速にその地位を確立しています。本記事では、RPAの基本概念から始め、その効果的な活用方法や、業務自動化、システム機能の拡張、API連携の代替、そして独自アプリ開発まで、具体的なパターンを詳細に解説します。これにより、RPAがいかにして企業のデジタル変革を加速させるかが明らかになるでしょう。

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こさい
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(株)完全自動化研究所代表のこさいです。

1) ITエンジニア歴25年超。RPA開発歴8年超
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3)RPAトレーニング動画を販売しています。
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RPAの利用方法を再定義しよう

RPAの利用方法を再定義するために、RPAとは何を自動化しようとしているのかを確認しましょう。

業務の3要素

一般的なビジネスプロセスモデリングの観点から、業務は「業務」「機能」「データ」の3要素で説明することができます。

  • 業務(手順)
    業務や手順は、特定のビジネスプロセスを構成する一連の活動です。これは、業務の目的を達成するために必要なステップを定義します。例えば、販売管理システムでは、注文受付、在庫管理、請求処理などの業務が含まれます。それぞれの業務は、特定の手順に従って実行され、効率的かつ効果的に業務の流れを維持します。
  • 機能
    機能は、システムが提供する具体的なサービスや能力を指します。販売管理システムの機能には、商品情報の登録・更新、在庫状況の確認、売上データの分析などがあります。これらの機能は、業務プロセスをサポートし、必要な情報を提供し、ユーザーが目標を達成するための具体的な操作を可能にします。
  • データ
    データは、業務プロセスやシステム機能が利用する情報の要素です。販売管理システムでは、顧客情報、商品データ、取引記録、在庫データなどがこれに該当します。データは、業務を適切に実行し、正確な意思決定を行うための基盤となります。データの整合性、正確性、タイムリーな更新が業務の効率と効果を左右します。

RPAは業務(手順)の自動化

RPA(Robotic Process Automation)の主なコンセプトは、定型的で反復的な業務プロセスを自動化することにより、効率性を高めることです。つまり「業務(手順)」を自動化することをターゲットとしています。

販売管理システムにおける注文入力プロセスを例にすると、従来は人手によるデータ入力が必要でしたが、RPAを用いることで、注文書のデータを自動的にシステムに入力し、在庫確認から請求書発行までのプロセスを自動化できます。RPAの導入により、手順の自動化が進むことで、システムの機能やデータの活用がより一層効果的になり、企業全体の生産性向上に寄与します。

定義を見直す

このように、Robotic Process Automation(RPA)が業務手順の自動化において重要な役割を果たしていることは広く認識されていますが、その利用価値はそれだけに留まりません。RPAはデータ連携や機能補助においても大きな効果を発揮し、企業のデジタル変革をさらに加速させます。このことを次の章でまとめます。

RPAの活用パターン

業務:定型業務手順の自動化

企業において反復的で時間がかかるタスクは、効率性を低下させる主要な要因です。RPAはこれらの定型業務手順を自動化し、エラーを減少させ、作業時間を短縮します。これは一般的なRPAの用途と言われているパターンです。

機能:システム機能の拡張

企業が直面する一般的な問題の一つに、使用しているシステムの機能が十分でない、あるいは特定のニーズに対応していない場合があります。Robotic Process Automation(RPA)は、既存のシステムの機能不足を補完し、ビジネスプロセスを強化する重要なツールとして機能します。

機能の拡張におけるRPAの役割

  1. コストと時間の削減 システム改修はコストが高く、時間もかかるため、多くの企業では実行が難しいです。RPAは比較的低コストで迅速に導入でき、必要な機能をすぐに追加することができます。
  2. 操作の簡略化とミスの減少 「操作を楽にしたい」「ミスを減らしたい」といったニーズにもRPAは効果的です。自動化により、日常的なタスクの負担を減らし、エラーを削減できます。

具体的な使用例

  • 定期的なパスワード変更の自動化
    セキュリティポリシーにより定期的なパスワード変更が必要な場合、RPAを使用してこのプロセスを自動化することができます。ユーザーの介入を必要とせずに、定期的にシステムのパスワードを更新し、セキュリティを維持します。
  • 独自の帳票作成
    標準のシステムでは提供されていない特定の形式やデータを含む帳票が必要な場合、RPAを利用して独自の帳票を自動生成することが可能です。これにより、手動でのデータ集計や帳票作成の手間が省かれ、効率が大幅に向上します。

データ:API連携の代わり

API(Application Programming Interface)は、異なるソフトウェア間でのデータ連携や機能連携を可能にするためのツールですが、すべてのシステムがAPIをサポートしているわけではありません。特に古いシステムや限られた機能を持つプラットフォームでは、APIが利用できないことが一般的です。こうした状況において、RPAは非常に有効な解決策を提供します。

具体的な使用例

  • 旧システムと新システム間の顧客データ同期
    ある企業が新しいCRMシステムに移行した際、旧システムからの顧客データを新システムに移行する必要がありました。しかし、旧システムにはAPIが存在しないため、データ移行は手作業で行われていました。これには多くの時間と労力がかかり、エラーのリスクも伴います。RPAを導入することで、このデータ移行プロセスを自動化しました。RPAボットは旧システムから必要なデータを読み取り、新しいCRMシステムに適切な形式でデータを入力します。この自動化により、データの同期が迅速かつ正確に行われるようになり、手作業によるエラーや時間の浪費を大幅に削減しました。

独自アプリ開発

RPA(Robotic Process Automation)は、定型的な業務の自動化だけでなく、特定のニーズに対応するための独自アプリケーションの開発にも使用されます。これにより、企業は標準的なソフトウェアやシステムではカバーしきれない特定の要件を満たすことができます。以下に、RPAを利用した独自アプリ開発の具体的な実例を紹介します。

具体的な使用例

  • 実例1: 独自ロジックを組み込んだ発注システム
    ある製造業企業は、基幹システムのデータを活用しつつ、独自のロジックを組み込んだ発注システムをRPAで開発しました。このシステムは、在庫レベル、生産計画、過去の注文履歴を分析し、最適な発注タイミングと数量を自動で計算します。RPAボットはこれらのデータを基に、必要に応じて自動的に発注を行い、供給過多や不足を防ぎます。このシステムの導入により、発注プロセスが効率化され、在庫管理の精度が向上しました。
  • 実例2: 独自の判定基準を組み込んだ納期管理システム
    小売業を営む企業は、基幹システムのデータを使用しながら、独自の判定基準を組み込んだ納期管理システムをRPAで構築しました。このシステムは、注文データ、在庫状況、配送スケジュールを分析し、各注文に対する最も現実的な納期を自動で計算します。RPAボットは、納期の調整が必要な場合には、即座に関連部門に通知し、迅速な対応を促します。これにより、顧客満足度の向上とともに、納期遵守率が大幅に改善されました。
  • 実例3: プロモーション用メールの一斉配信アプリ
    あるマーケティング部門では、Excelで管理されている宛先リストを活用し、プロモーション用メールを効果的に一斉配信するためのアプリをRPAを用いて開発しました。このアプリは、数十社のメディア宛に同一フォーマットのプロモーションメールを作成し、一斉に配信します。この自動化により、担当者の送信ミスが減少し、送信頻度も向上しました。その結果、マーケティングの効率が向上し、キャンペーンの成果が顕著に改善されました。

まとめ

この記事では、Robotic Process Automation(RPA)が企業のデジタル変革にどのように貢献しているかを詳しく探りました。RPAは単なる業務自動化ツール以上のものであり、業務プロセスの効率化、システム機能の拡張、API連携の代替、さらには独自アプリ開発まで、多岐にわたる用途で活用されています。これらの実例を通じて、RPAがいかに多面的に企業のニーズに応え、業務のスピードと品質を同時に向上させるかが明らかになりました。企業が直面する様々な課題に対して、RPAは効率的かつコスト効果的な解決策を提供し、ビジネスの持続可能な成長を支援します。