完全自動化の要件定義とは(その1)【全体の現状把握】

DAF(完全自動化工場)で何の業務を完全自動化するのか検討し、何をゴールにするのかを定義のが「要件定義」です。

この工程では現状と完全自動化に必要な要件を把握し、文書にまとめます。一度で完結することはありませんので、難しく考えず早く手を付けて進めることが大切です。

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こさい
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(株)完全自動化研究所代表のこさいです。

1) エンジニア歴25年超。RPA開発および支援8年超
2) RPA関連の書籍を5冊出版。現在はGPT×PADの書籍を執筆中!
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現状把握(全体)

1. 現状のシステム概要を把握する

個別の完全自動化案件に深入りする前に、案件に関わるシステムの概要を把握します。

デスクトップ型RPAツールの知識がある方は、「現状の業務をまったく変えずに、そのままRPAツールに覚えさせればいいので、システム概要の把握は必要ない」と思っているかもしれません。

しかし実際の業務は、システム・エンジニアの視点からみると非合理的な方法でシステムを利用している場面が多く見られます。

例えば「別のシステムから、集計されたデータが取り出せるのに、明細データを手作業で集計している」「複数の人が同じデータをダウンロードしているので、システム負荷がかかって余計に処理が遅くなっている」などです。

これらの業務をそのままRPAツールに覚えさせてはいけません

正確かつ効率的に業務を自動化するためには、案件に関わるシステム概要を把握することが必要なのです。

2. システム概要の文書を作る意味

もう1つ、この段階で全体を把握し、文書を作成することには意味があります。それは、経営層に見せるためです。

完全自動化を行う時には経営層の支持が必要です。

部署間の垣根を超えて行う自動化もありますので、利害関係の調整にひと肌脱いでもらう必要も出てくるでしょう。

その時に経営層がまったくシステム概要を把握していなかったら、あなたも予期していない方向に話を持っていかれてしまうかもしれません。

そもそも、あなたが何をやっているのか理解してもらえず、まったく評価してもらえないかもしれません。そうなると、あなたも周りもモチベーションが上がらず、完全自動化は頓挫することでしょう。

「システム部が昔作った難しいシステム概要図」は、忙しい経営層は見たくないものです。もっとシンプルで親切な概要図を作り、経営層を味方に付けて、「応援してもらえる自動化」を目指しましょう。

業務の概要を表すのにはデータフロー図が適しています。次の記事を参照してください。
RPAの要件定義|データフロー図の書き方

3. 課題を把握する

「経営層・マネージャ層から見た課題」と「実務者から見た課題」は異なります。

DAFチームは双方の課題に加え、「完全自動化の観点から見た課題」を把握しましょう。

これらを表1のように文書にまとめておきましょう。

【表1】現状把握(全社)の文書の雛形

4. 初期診断

現状の大枠と完全自動化したい案件が見えてきたところで、いったんゼロベースで眺めてみることが大事です。

なぜなら、「すべての業務を完全自動化できる」わけではないからです。

また、完全自動化できるとしても、「仕様がわかる人がいない案件」「人の判断や手作業が絡んでいる案件」「複数の部署の思惑が複雑に絡んでいる案件」などは調査や調整に多くの工数がかかってしまいます。

要件定義する中で「今の自分の力量では自動化できない」と判断したら、いったん保留するか、優先順位を落とすことも念頭に置いてください。

まとめ

この記事では完全自動化工場(DAF)を開発する上で必要な要件定義について解説しました。現状把握(全体)ということで、これは前半です。

後半は個別業務の把握です。こちらも併せてお読みください。

さて、前半は終わりましたが、大事なのは概要と課題を掴んでドキュメントにまとめることでしたね。そして、この段階で「初期診断」を行う、という手順です。

ただし、コンサルタントが行う初期診断とは違います。コンサルタントは診断から解決までを間違わずに提示することが仕事ですが、実務の現場で求められるのは行動と結果です。

行動することによってのみ得られる情報があるので、試行錯誤は避けられません

僕も何回も失敗しました。

本記事をガイドラインとしながら、試行錯誤することであなたにあった完全自動化のガイドラインを見つけていってください。

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